■タイトル
工場見学記

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栗田陽一
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■内容
先日「株式会社豊田自動織機」長草工場(愛知県大府市)を見学する機会がありました。この会社は繊維機械でも名だたるメーカーですが、それに加え、トヨタグループの一員として、ビッツと北米向けカローラの組立も、この工場で行っています。90秒に1台のペースでビッツが完成してゆきます。見ていますと、それだけでも壮観です。

感心したこと その1
組立現場は意外にも狭いです。敷地に余裕がないわけではないんですが、可能な限り窮屈なレイアウトを取っています。組立ラインの作業者がいちいち部品を取りに一歩踏み出さなくても良いように、組み立て作業をしている手元に部品やユニットが無人台車で供給されるようになっています。
「工場の中をモノが動く、そのモノと一緒にヒトも動くこと自体は何の付加価値も生まない」んだそうです。
うちの工場は、モノもヒトも右往左往しています。つまりムダだらけです。

その2
溶接ロボットをはじめ、機械設備は10年選手ばかりで古いもんです。にもかかわらず、この工場はトヨタグループの組み立て工場でも随一の生産性と品質を誇っております。最新鋭の設備の威力で高い生産性を実現しているわけではありません。さて何ででしょう?
たとえば、従来比スピード倍増の最新鋭の溶接ロボットを導入したとしましても、それ以前の全ての工程、それ以後の全ての工程が一緒にスピード倍増してくれないと、何の威力も発揮してくれません。それよりも、数百ある工程、機械でできる工程も人間でないといけない工程も全てが常に滞りなく一定のサイクルで動き続けること、先の工程を待つのではなく後の工程を待たせるのでもなく、常に同じリズムで生産活動を行うことこそが安定した高い生産性、安定した高い品質につながるとのお話でした。(長距離を走るランナーは、むやみやたらにダッシュを繰り返さず一定のペースで走っている、というようなものです)
当然ながら機械の故障やら何やらトラブルもあります。そうした場合の悪影響を最小限に食い止め速やかにもとのリズムを復旧させる、そしてトラブルが再発しないように即座に対策を講じ実行するマンパワーこそが高い生産性ひいては利益の源泉だったのです。

その3
幹部の方曰く「社員さんは貴重な人生の一部分を、自身の幸福実現のために会社に提供してくれているのだから、めいっぱい働いて頂かないと大変な失礼にあたる。そのために私は日夜奮励している」のだそうです。トヨタグループは経営者、管理者すべてこの考え方だそうです。現時点でいくら利益をあげても満足しない、凄みを感じました。
経営者として、「まあ気楽にそこそこ働いて貰う積もり」と「来ている限りは一昨日よりも昨日よりももっと目一杯働いて貰う積もり」の差は果てしないものがあります。
だから、「ひとりひとりに余分な動きは一切させない」「同じリズムで全員がムダなく働き続けることができるよう、あらゆる手を尽くす」ことで高い生産性をあげ利益をあげ続けることができているんでしょう。

この見学には、西条YEG OBのT先輩ともご一緒でした。工場を出た後で「四国の田舎は如何にのんびりしていることか」という話になりました。